HC7 ブログ

サウジアラビア在住。いろいろあることを、つれづれと書きます。

中近東での店舗販売の質を向上していくために

 ブランド、というものを扱う仕事について11年目になる。会社としてはBranding/Disctirubitonというものを主業務としているのだが、3年半前から中近東に駐在し、より小売り(Retail)に近い目線でブランドをどのように育てるか、ということを日々考えている。小売り、というものは、店舗にてお客さんに商品を売る仕事である。その場合は、当然ながら店舗にいる販売員がお客さんにそのブランドに関して伝え、商品にどういった魅力があるのかを説明し、購買してもらうということになる。なので、販売員は言うなればそのブランドの”顔”ということになる。よって、その販売員がどれほどブランドのことを熟知しているか、ブランドの良さを熱意を持って伝えることができるか、というのは、販売戦略にとって非常に重要なポイントになる。そのような能力を伸ばすための体系立ったカリキュラムが必要なのである。基本的な情報を伝えるのはもちろん、ブランドに対するロイヤリティ(Loyalty)を高め、さらに販売活動に対するモチベーションを高く保ってもらうために。

 まず、ブランドに関する基本的な情報の取得、という点ではやることは比較的単純で、そのブランドのhomepageだったり、主要な情報をまとめた冊子なりを使って理解できるまで説明をする、ということになる。できれば店舗で、実際に商品を見ながら行うのが良い。

 そして2つ目のブランドに対するロイヤリティの醸成、というもの。ものすごく簡単に言えば”ブランドを好きになってもらう”ということだ。これは当然ながら一つ目のブランドに関する知識にもかかわってくるが、もっとその販売員自身の実感として”ブランドの良さ・空気感”が理解できている必要がある。ファッションブランド商売、というものは、スーパーで野菜を売ったり、家電量販店でテレビを売ったりするものとは根本的に違う部分がある。「言葉で明確に他との違いを説明できない、”オシャレ・カッコいい・カワイイ・ステキ”を売る」という点である。野菜であれば何グラムいくら、テレビであればどういういった機能がついているのでいくら、という明確な差別化要因が無い部分がそれである。そのブランド独自のステータス・歴史・雰囲気も全部含めていくら、というものなのだ。よって我々は有名モデルに商品を持ってもらい広告をし、そのブランドの歴史説明する雑誌広告を打ち、我々の商品を持っているセレブリティがいれば、その写真を我々のSNSにアップするのだ。よって我々がお金をかけているこのPRの部分を販売員に対してもしっかりと伝えていく、ということがこのプロセスでは必要になる。

 そして最後が販売活動に対するモチベーションという部分だ。これも当然ながらその前の2つの項目とも深く関わる部分であり、最も直接的に売り上げに関わるポイントと言っても過言ではないと思う。中近東の小売りの傾向として、このモチベーションが他地域と比べって圧倒的に低い、ということが挙げられる。この点には明確な理由がある。例えば日本のある程度ラグジュアリーなファッションブランドの販売員は正社員の日本人であり、その日本で長く勤めていこうとしている人であることが大半である。一方で中近東の場合は大部分が出稼ぎの外国人になる。永住することを初めから考えておらず、祖国の事情で中東で販売員として働いている人が非常に多い。あくまでも一時的な職、という意識が強いので店舗での販売活動に対するモチベーションが沸きにくい、という傾向があると考えている。そいういった販売員をモチベートする最も効果的な施策は、身もふたもないが”販売活動に対する成果をお金で還元する”ということである。要は売上に対するインセンティブ・プログラムを導入するのだ。その導入の仕方に関しても店舗毎に目標金額を設定するか、販売員個人に設定するか、等いろいろな方法があり、それも百貨店内のshop in shopなのか、直営店なのか、ということも加味しながらさじ加減を変えていく必要がある。これは非常に効果が高い。もちろんしっかりと日々の販売活動をしっかりとレビュー、良くできている部分はしっかりと評価し、できていないことをしっかりと指摘していくことが大前提であることは言うまでもない。

 長々と書いてきたが、これらのことをしっかりと組織だって運営できている会社は非常に少ない。そのことは一消費者として店に入って接客を受けていると、常々実感することである。それだけにいろいろとやりようがあり、これから伸ばしていくことが可能なマーケットでもあり、試行錯誤を繰り返していこうと思っている。