HC7 ブログ

サウジアラビア在住。いろいろあることを、つれづれと書きます。

小売り雑感 (一般)

小売りの業界に関わっていると、”在庫の取り扱い”という、かなり重要・かつ難しい問題に日々直面することになる。消費者の嗜好が急速に移り変わっていくファッションの業界では尚更である。人々が欲しがるものを、適切なタイミングで、店頭に在庫として保有しておかなければせっかくの商機を逃すことになる。一方で売れると見込んで大量に仕入れたものが売れなかった場合、大量の在庫を抱えることになる。定価では売れない不良在庫の処分のために値引きをして販売すると、ブランド全体の価格設定に不信感を持たれる原因となる。商機の逸失と、在庫過多のバランス。このジレンマから抜け出すためにはブランドのコアとなる、シーズンに関わらず売れる定番商品の強化が必要であるが、飽きられない定番というある種矛盾する二つの価値を両立する必要があり、これも非常に緻密で繊細なブランディングが要求される。そしてそれを成すためにはマーケティングの視点だけでは足りないんだよね、ということを最近つくづくと実感している。

徹底的なマーケティングによって、消費者が欲しいもの・流行っているものを察知し、それを市場に投入する。とても論理的だし分かりやすいし、そりゃあそれができれば今そこにある需要はとれるだろう。でも、本当のブランド、というか人に刺さるファッション、って、人々が今まで気づいていなかったカッコいいもの、本当は欲しかったもの、これから好きになるものを提示することなんだろうな、と、そんなことを最近は考えている。

The mind knows not what the tongue wants. It's a mystery!

今から10年も前のTEDのスピーチでMalcolm Galdwellがスパゲティソースの革命の話をしていた時に出てきた言葉です。

People don't know what they really want.

 

www.ted.com